「曲(チィー)」とは
白酒をつくる麹「曲」
白酒をつくる麹(こうじ)は、「曲(チィー)」と言います。曲は白酒の原料である穀類にカビ(糸状菌)を増殖させ、糖化酵素(デンプンを分解して糖に変える酵素)を主体とした酵素群を蓄積。原料中のデンプンを糖化させ、アルコールにする役割を担います。
日本の「麹」と中国の「曲」の違い
日本の麹と言えば、米麹や大豆麹、小麦麹などを思い浮かべる方が多いかもしれません。蒸した原料に種麹を加えて、その表面に麹菌を増殖させる発酵法は「散麹(ばらこうじ)」と呼ばれ、「コウジカビ」という麹菌が使われます。
一方、原料の穀類を粉砕してから水で練りかため、そこに「クモノスカビ」という麹菌を増殖させた「餅曲(ビンチィー)」が中国の曲です。原料となる穀類は日本の製麹のように蒸すことはなく、生のままで粉砕。それから水をまき、木製の型枠に詰めて成型し、培養します。餅曲はその大きさから「小曲」「大曲」と分けられます。
個体発酵とは
中国独自の技法「個体発酵」
「個体発酵」は、中国の白酒製造でのみ行われている特別な発酵方法です。土に巨大な穴を掘り、そこに原料と大曲を入れて上から土をかぶせ、土中で原料を個体のまま発酵させます。
世界では容器を用い、液体状でお酒を発酵させる方法が一般的なのに対し、白酒だけが固体状で発酵させて作られています。中国特有の個体発酵は、1930年代までは知られていませんでした。この特殊な発酵法が明るみになると、世界中の発酵学者や醸造学者の間で学術的に大きな話題を呼んだと言います。
作り方
白酒の作り方概略図
細かい工程は省略し、白酒の作り方の流れをわかりやすくまとめてみました。
※こちらの図はあくまでも一般的な作り方になります。白酒の作り方は各メーカーによって異なります。
老窖とは?
古い穴蔵は「老窖(ラオジャオ)」といいます。老窖は古いもので、
- 五粮液の明代初(1368年)
- 泸州老窖の明代(1573年)
- 茅台の明末清初(1627年)
- 剣南春の清代(1636年)
と古いものでは、今から600年以上の歴史があります。
これだけ長い間、発酵を繰り返して使っていると、その窖(あなぐら)の土床や測壁面には多様な酵母が棲みつきます。老窖(ろうこう)になればなるほど、アルコール発酵を促すサッカロマイセス属、芳香成分を生成するハンゼヌラ属やピヒア属などが活発に活動し、白酒特有の香気が生まれるのです。
これが名酒が名酒である所以。おいしさの秘密です。
※こちらの記事の参考文献:https://baijiu.jp/reference